IoT-Farm_ver.0.1(このページは製作途中です)

私は岡山県北部で農業をしています。稲作と少量の野菜を作っていて、この農業にIoTが活用できないかと考えています。農業は携わる人々の高齢化が進み、若い人々の農業離れが進んでいます。 これは国内の第一次産業では全般的な傾向ですが、少しでも多くの若い人たちに興味を持ってもらえるように、また現在頑張っていらっしゃる方々にIoTを活用した農業を提案したく思い、このページを作っていきます。


水田の水量をモニターしたい

私の水田の場合、5反程度(50アール程度)の面積で水田は6枚が分散してあり、自宅を中心にして半径300m以内に点在しています。このため、各フィールドと自宅との通信はX-Beeを考えています。 管理項目は「水量」、「日照」、「気温」、「湿度」、「風量」、「CO2濃度」くらいを目標に、稲の生育具合(気温と日照で判断)と必要なアクション(水量、農薬散布などの指示)、収穫時期を予想するシステムにしたいと考えています。

さて、稲作(水耕)では水の管理が重要です。田植えの少し前から水田には水をため、準備を進めていきます。水が豊富でない地域では潅水に気を遣う時期となります。 また、水田にいつも水が張ってあればいいというわけではないため、水資源が豊富なところでも、稲にとって水が不要な時期には排水して田を乾かさなければなりません。 このように、水田では水量をコントロールする必要があり、頻繁に水量を確認し、かなりシビアに水の引き込み、排水をして水量の調整を行うわけです。

そこで、先ずはこの水量のモニターをIoTで実現したいと考えました。水田に(或いは水田に併設してある水路に)水位計を設置し、測定値を自宅へ飛ばそうというわけです。 水路・水田への水の出入り口の形状が水田ごとにまちまちなため、水田の水量の調整を自動化することは大掛かりになりすぎます。そのため水の出し入れは手動で行わなければなりませんが、 各水田の水量が家に居ながらにしてモニタリングできるメリットは大きいです。行く行くはスマホなどでモニターできればと考えています。

ここで重要となるのが水位センサーです。ご存じの方も多いと思いますが、一般的に水田は泥・土であり、コンクリートのように形の定まった構造物はありません。また、検知対象の水も、川のように比較的きれいな時もあれば、 ある時は泥水であったり草が浮いていたりと不定要素も多くあります。このような場所に比較的簡単に設置出来て、設置しただけで運用が簡単なモノ…。そんなこんなで寝ながら考えた挙句、「ウキを使うなどの可動式はダメ(可動部がゴミなどで作動不良を起こしそう)。 電気を流すか静電容量か」となりました。水の有無の判定であれば導通でOKでしょうが、水位を検知するとなれば…ということで、センサー部を試作してみました。


静電容量の変化による水位センサー(試作)

センサーを構成する材料です。アルミホイル2枚(大きさはL版写真サイズより少し長く)、ラミネートフィルム2枚(上のスケールは大きさを示すものです)。
アルミホイルを、ラミネートフィルムの終端側にはみ出すようにセットし、ラミネートします(2枚とも同じ)。ラミネートからはみ出した部分が電極となります。

試しに、ラミネートしたアルミホイルを重ね合わせて静電容量を計ってみました。”18pF”です。思ったより少ないです。誘導体(絶縁体)を水にすると静電容量は増加すると思いますが、果たして実用範囲となるでしょうか?

電極間の寸法が変わらないように、また水に浸けたときの毛管現象を回避させるため、ある程度スキマを開けて固定します。電極同士のスペーサーに割り箸を使いました。中にも1本入れています。電極の間隔は約5ミリです。

水に浸ける前の静電容量です。”38pF”です(実は、後に水中に浸けると思ったより静電容量が増加したため、測定レンジを1段上げています)。

少し水に浸けました。アルミホイルの、下側1センチほどです。液晶が見にくいですが、”560pF”と表示されています。

全体の半分ほどを水に浸けました。液晶が見にくいですが、”1528pF”です!ばっちり水深の変化を容量変化として捉えています。


簡易的な静電容量の変化による水深センサーの実験でしたが、静電容量の変化を水深の変化として捉えることは出来そうです。静電容量型センサーは電極の面積と両電極の間隔が重要ですが、センサーが大きすぎるのも実用的ではありません。 また電極間に水が残らないように間隔を微調整したりゴミなどが入らないような構造、水流で電極が動かない構造にするなど、センサー部の最適化が必要です。センサー内部の電極の構想はこの実験で大体定まりましたが、 センサーのケーシングを含めて最適な形状を検討していきます。また、実際のシステムでは、運用時のセンサーの静電容量は数百pF~千数百pF程度と見込むと、発振する周波数が高くなりそうです。検波、LPFなどの処理で扱いやすくしようと考えています。



実際にフィールド(水田)に設置できるように水位センサーをケースに入れてみました。ケースは両電極の接触を防ぎ、電極間に侵入する水を、水位が下がった時には確実に排水出来ること(毛管現象の残留水分が無いこと)、汚泥中でもゴミの侵入が無いこと、 外面フィルター部にも水が引いた時の水分の残留が極力ないこと、あまり大きな形状でないこと等に重点を置いて設計してみました。


センサーの両電極同士の間隔を保つスペーサーをセットします。近いと静電容量面で有利ですが、実水位が下がっても毛管現象で電極間に水分が残ってしまいます。また、スペーサーの方向は、水が溜まらず流れるように、縦方向とします。

電極を下側から見ます。縦方向のスペーサーに挟まっている2枚のフィルムが電極です。

スペーサーで挟まれた電極をケースにセットします。スペーサーを縦方向にしたので、ケースのごみ除けは横方向です。横方向だと水位が下がった時に水が溜まるため、傾斜を付けています。

反対側のケースを取り付けて水位センサー部の完成です。これで60ミリ程の水位変化が30pF~500pF程度の静電容量の変化として検出できます。



今回試作した水位センサーは約60ミリの水位の変化が検出できます。実際にはもう少し検知範囲を広げたいため、また、静電容量ももう少し多い方が扱いやすいため、電極の大きさ=センサーの大きさを大きくするように見直そうと思っています。

戻 るHome