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ユーロラックモジュラーシンセサイザー用電源

2021年6月12日

クラウドソーシングにて、O様よりお仕事をいただきました。ユーロラックモジュラーシンセサイザーの電源の設計のご依頼です。私自身、ユーロラックモジュラーシンセサイザーについての知識が全然なく、O様にはご迷惑をおかけしています。 O様曰く「全然わからないので設計を宜しく。パーツは調達して自分で作る。やったことが無いのでアドバイスを宜しく」とのこと。全然やったことが無い分野でもご自分で作ってみたいというO様の熱意・パワーに感服しました。完成までサポートいたします!

さて、ユーロラックモジュラーシンセサイザーって何でしょうか?O様より頂いた資料、ネットで調べた結果、「ユーロラック規格のアナログシンセサイザー※」のようですね。ドイツのDoepfer社が提唱する規格のようです。電源、I/F、サイズなどはこの規格に従います。 で、アナログシンセなので、音のアレンジ過程で多くのユニットが必要となり、それを収納するラックに電源が内蔵されていて、その電源の設計・製作が今回のご依頼のようです。

この電源はDC±12Vが必要で、稀にDC+5Vも必要とあります。DC+5Vはおそらくロジック回路のためなのでしょう。古くはDC+12Vとは別に給電していたようですが、最近ではDC+12Vからユニット内部で+5Vを作っているようです。 とはいっても、DC+5Vが必要な場面も想定されるため、DC+5Vを含めて給電できる電源部を設計します。電源の容量は各モジュールの合計ですが、どのようなモジュールがあって、一般的にどの組み合わせで組まれるのかが分からないため、調べてみます。

対象はアナログ回路であり、音質に直接影響するため品質の高いDC電源が要求されます。また、自宅、コンサート会場など色々な場所での運用が考えられますので、安全面では多角的な検討が必要です。

※最近はアナログだけでなく、例えばオシレータもDSPを利用するなど、デジタルで高性能なモジュールも多くあるようです。


6月13日

ただ今、ユーロラックモジュラーシンセサイザーについて調査中です。

この辺りは保留項目としつつ、ブロック図を描いてみました。ユーロラックモジュールシンセサイザーの電源は、トランスは別で設置のようです。両電源AC15V-0V-15Vから±12Vを取るのがよさそうです。 適当なトランスを別途用意し、「ノイズフィルター」→「整流」→「平滑」→「安定化」→「保護回路」といった回路で構成される電源回路により、安定化された±12V(1A未満)/+5V(数百mA程度)の容量を目標とします。

今回の電源はモジュールシンセサイザー用なので、使用される人がモジュールユニットを組むわけです。また、演奏の合わせなど、複数の人が使用することがあるかもしれません。この電源の設計に携わった人以外でも十分に機能が発揮できるよう、 また、不安定な仕様にも耐えられるよう、細部まで安全設計を心がけたいと思います。

ということで、今の時点での電源の仕様は、

また、O様より筐体のサイズの連絡がありました。内寸で、

ということで、200x120の中に収めるように設計しようと思います。

電源回路の仕組み

ここで、電源回路について簡単にまとめておきます。電源回路の目的は、電源回路に接続される電子回路に安定した電力を供給することです。電源回路に供給される電源は様々ですが、今回は交流15VP-P電源としましょう。 これを全波整流で±の電源とします。GNDはトランスのCTタップです。

交流を整流しただけでは脈流となって凸凹していてあまり美しくありません。そのまま使うには無理があります。そこで、コンデンサーによる平滑回路を設けます。コンデンサーは「交流を通す働き」と「電荷を蓄える働き」がありますが、 ここでは「電荷を蓄える働き」を利用します。脈流の凹んだところの電力を補い、電圧を平坦に近付けます。平滑回路に使用するコンデンサーは、主に静電容量の大きな電解コンデンサーが使用されます。

では、平滑部に使用されるコンデンサーの容量を計算してみましょう。
平滑コンデンサーの役割は、整流後の脈流のリプル成分を減少させることです。
コンデンサーの充放電が繰り返されることで、蓄積電荷量が変化し、電圧が変動してリプルとなります。放電電流は負荷電流であり、以下の式が成り立ちます。

ΔV = ΔQ / C
ΔQ = I x t
C = I x t / ΔV

ΔV:リプル電圧(pp) 、I:負荷電流値 、t:放電時間 、 C:コンデンサ容量値

今回の例で計算してみます。負荷電流=500mA/リプル電圧は後段がレギュレターICなので1Vppくらいは許容されると思いますが、品質を考えて0.5Vppとします。放電時間は東日本での電源周波数50Hzの全波整流で、大雑把に5ms~10msの間です。

500mA x 5ms / 0.5Vpp < C < 500mA x 10ms / 0.5Vpp
5,000uF < C < 10,000uF

これにより、8,000uF程度の電解コンデンサーを使用します。


6月14日

O様よりコストのことで相談がありました。安い方がいいとのことです。当然のことです。お金を掛けてまで自分で作る価値は?ということでしょう。市販品より安いものを作って、いずれは広く使っていただきたい、とのお考えのようです。素晴らしいですね。 ということで、過ぎる性能の追及は止めて、性能とコスト、バランスのいい設計を行います。
先日、コンデンサーの容量を計算しました。これは、どちらかというと、性能を考えた設計です。実際には後段にレギュレターICが続き、そこでレギュレーションが効くため、コンデンサーの容量はそこまで必要はないと思われます。 実際の製作例を見ても、せいぜい数千uFで、一万uF近い容量のものはありませんでした。おまけに、大容量コンデンサの¥は若干高めです。よって、少し容量の小さいコンデンサーを使用したいと思います。

順番が前後しますが、整流部はブリッジDiを使います。整流用の一般的なものです。

レギュレターICは±両電源ということで、78/79シリーズを使用します。これらは|12V|ドンピシャです。調整の必要がありません。レギュレターICは発熱するため、見合った放熱器が必要です。
尚、+5Vは+12V平滑部から頂戴し、これも3端子レギュレターICを使用します。

尚、電源部の入力部にはリセッタブルヒューズを挿入し、万が一の過負荷に対応します。また、各ブロックの入出力にはLEDを設け、通電確認を行えるようにします。異常時にはどこが悪いかすぐに判断できます。 平滑部は大容量電解コンデンサーとパラに小型電解コンデンサー、セラミックコンデンサーを挿入し、周波数特性の改善を狙います。

このように、だんだんと回路が定まってきます。並行して徐々にではありますが、基板のパターン設計にも着手しています。対象が電源の基板なので、ガラスエポキシ基板は必須です。プリント基板の設計は、PCBEになります。


6月15日

ただ今、回路と基板のパターンを並行して製作中です。先日、O様よりケースの大きさと、その内部での電源基板の大きさについてご指示がありました。それをクリアすべく、サイズも同時に検討しているところです。

ここで、おもにシリーズ電源で使用されるパーツについて簡単に紹介します。

トランス

交流電圧を変換します。電源部に使用するトランスは、電灯線の周波数をそのまま使用する場合、周波数が低いため、大きさが大きくなる傾向があり、その分重さも重くなります。写真のものは1次側:100V/2次側20V-2Aのものですが、掌にちょうどいっぱいな感じで、 ずっしりと重いです。なお、今回はトランスは除外ということで、参考としてイメージを載せています。

IC

ICは"Integrated Circuit"の頭文字をとったもので、集積回路のことです。写真は代表的なものを載せましたが、形状、機能は様々です。今回の電源には使いませんが、アナログシンセではOPアンプが多用されます。また、場合によってはデジタルICも多く使われています。

レギュレターIC

今回の電源回路の心臓部です。シリーズ電源である程度決まった電圧で大電流でない場合、このようなレギュレターICは多く使われます。レギュレーションが良く、コンデンサーを外付けするだけで簡単に使用できるため、とても便利です。

ヒートシンク

レギュレターICやパワーTrなど、作動時に発熱が避けられないパーツもあります。発熱する電子部品は決められた温度を超えると性能を著しく損ない、最悪の場合破損してしまいます。これを回避するために、発熱するパーツにヒートシンクを取り付け放熱させてやります。 発熱はパーツの電気特性から計算でき、放熱はヒートシンクのデータから計算できます。発熱から放熱を差し引いた温度がパーツの温度となり、この温度が絶対規格の最高使用温度を超えないように設計します。

トランジスタ

増幅素子です。バイポーラトランジスタ、電解効果トランジスタなど様々な種類がります。電源回路では、トランジスタで比較的大きな電力を制御することも多くあります。

ブリッジダイオード

電源回路の整流部でよく用いられるパーツです。4本のダイオードの組み合わせで、全波整流となります。

整流用ダイオード

ブリッジダイオードは4本の組合わせでしたが、単品のダイオードも用いられます。

LED

発光ダイオードです。電球に比べてとても少ない電力で発光するので、インジケータなどに使うとその威力を発揮します。また、電球に比べて光の応答はとても高速で、通信用としても使われています。青色LED、緑色LEDの登場でLEDでフルカラーを表すことができるようになりました。 フルカラーはRGBそれぞれの明るさを調整することで、全灯で白色から全消しで黒色まで、文字通りフルカラーが表示できます。これにより、(PC用のものだけではなく、その他飾ると意味での)ディスプレイ用として一気に広まっていったのは皆さんご周知のとおりです。 青色LEDのインパクトが強いせいで、同色LEDは単独で使用するのが流行りのようです。写真の一番下の多ピンのものはRGBフルカラーLEDです。なお、LEDの駆動電圧は、例えば赤色が2V前後、青色が4V前後と、さらに型番によっても違うため、データシートで確認してください。

コンデンサー

コンデンサーは多くの種類がり、写真では左から電解コンデンサー(大)/電解コンデンサー(小)/積層セラミックコンデンサー(大)/積層セラミックコンデンサー(小)です。電源回路ではリプル除去のため、大型の電解コンデンサーが使用されますが、これでは高周波域で周波数特性があまり良くありません。 しかし小型のコンデンサーは比較的高周波特性が良好なため、大型電解コンデンサーと並列に小型電解コンデンサー、またはセラミックコンデンサーなどを接続する場合があります。
※電源回路ではタンタルコンデンサーは使用すべきではありません。タンタルコンデンサーは静電容量の割に小型で魅力的ですが、故障モードがショートなので(故障時にショートとなる)、電源回路には不適です。

抵抗器

固定抵抗器です。写真は1/4Wカーボン抵抗器(±5%)です。抵抗器の胴のカラーの帯は抵抗値と誤差を表し、写真のものは上から”4.7kΩ”、”1.5kΩ”、”1.0kΩ”です。誤差は、全て±5%です。抵抗器も種類が多く、2%、1%、それ以上の精度のもの、金属皮膜抵抗器など、また耐電力も1/8W~数十Wまで様々です。 固定抵抗器以外に、可変抵抗器(ボリューム)、半固定抵抗器(基板上の調整用)などがあります。アナログ回路では調整用の半固定抵抗器は不可欠です。また、アナログシンセではオシレータ、ミキサー、アンプなどでボリュームが多用されます。


この他、「電源コード」、「ヒューズ」、「スイッチ類」、「コネクタ類」、「プリント基板」、「ケース」、「ネジ類」、「配線材料」などを使用します。こういった目に見えにくい材料も、結構なコストがかかります。


ここまで、電源回路で使用されるパーツについて簡単に説明しました。標準パーツを中心に紹介しましたが、市場では小型化が進んでいて表面実装パーツ(下の写真)も多くあります。

左から2番目はICです。OP-Ampですね。その右がTr、Diと続き、上下に2個並んでいるのがコンデンサーと抵抗器です。一番左にある緑色のゴミみたいなものはLEDです。これは小さすぎて手動実装は難しいですね。上には大きさの比較にマイクロSDを置いています。
今回は表面実装パーツも何点か取り入れようと思います。表面実装パーツは半田面に実装できるため、パーツの実装密度を上げることができます。また、特に発熱するパーツなどではベタアース面を放熱器として使うことができます。


6月16日

さて、今日は「直流(DC)」と「交流(AC)」についてお話します。
直流は、最近では皆さんが身近にご利用になっている電気です。

一方の交流も、皆さんの身近までは来ています。

ここで、直流と交流の特性について説明します。

直流

直流は+極、-極が決まっていて入れ替わることはありません。上の図はDC100Vですが、波形の振幅そのものが電圧になります。
現在では多くの電気製品が直流で使用され、一般の電気製品のようにAC100Vに接続するものでも、ほとんどのものは内部で直流電力に変換しています。直流電源を使用する器具、更にはその内部で使用するパーツも極性が決まっているものが多くあり、 電圧と極性を合わせて使用します。5Vの電子回路に12Vを加えると破損の可能性があり、5Vの電子回路に3.3Vを加えても作動しない可能性があります。また、極性の逆接続も故障の原因になります。5Vの製品には5Vの電源を、極性を合わせて接続してください。また、電源には容量をいう重要な特性があります。 「このスマホの充電器の出力は2A」といった感じです。負荷に見合った電源を使用することはもちろん、双方を接続する配線材も電流に耐えるものを使用してください。なお、大きな容量の電源に小さな負荷を接続することに問題はありません。

音楽・音声信号は交流信号です。交流信号を処理する電子回路では信号の+側と-側を分けて処理するため、電子回路も+側の処理、-側の処理といった構造となります。そのため、多くの交流信号を扱う電子回路では±の電源が必要となってきます。なお、スマホとか携帯音楽機器などでは音声信号などを扱いつつも 単電源(+電源のみ)で作動するものが多いですが、これは電子回路の入力部で交流信号に直流成分を加えて-成分を無くし(オフセットと言います)、+成分側だけで処理を行い、電子回路の出口で直流成分をカットして交流信号に戻すといった方法で行っています。出口の直流成分のカットには比較的容量の大きなコンデンサーが使用されます。 この方法だと低周波の利得が低下し、またコンデンサーが音質に影響を与えてしまい、音質が犠牲になります。

交流

交流は電圧が+から0を超えて-に、また戻って+に…と変化する電気です。波形はサインカーブで、日本の商用電源は東日本で50Hz、西日本で60Hzです(Hzは”ヘルツ”と読み、1秒間に0と交差する回数です)。上の図はAC100Vですが、振幅の幅が100Vではありません。100Vは実効値で、振幅の幅は実効値に√2を掛けた値となります(この場合は141V)。
交流電力をそのまま使う電気製品は、現在では多くはありません。例えば、白熱電球、旧型蛍光灯、交流モーター、ヘアードライヤー、トースター、半田ごてなどです。
このように用途が少ない交流電源ですが、なぜ電力会社は交流電源を供給するのでしょうか。それは、高電圧の方が送電に都合がいいことと、交流は電圧の変換が比較的容易に行えるからです。
消費する電気は電力となります。例えば1000Wの電力を消費する場合、100Vでは10Aの電流ですが、1万Vでは0.1Aの電流となります。送電線は日本中に張り巡らされていて、その距離を考えるとわずかな送電線の電気抵抗も馬鹿になりません。その送電線に電気を流す場合、電流が少ない方が電圧降下によるロスが少ないのです。 先ほどの100Vと1万Vでは電流比で100倍です。つまり、高電圧で送電すればそれだけ電力のロスが少なくなる。また、電圧の変換も容易である。これらのために交流電源が利用されています。 こうして家庭、オフィスの壁には交流電源が来ています。それを電気機器内で⓵必要な電圧まで変圧し、⓶整流して直流にしたのち、それぞれの電子回路へ供給されるのです。


脈流

ここまでの「直流」と「交流」は中学校理科でも習うので、なんとなく覚えていらっしゃるかもしれません。ここでは新たな波形である「脈流」について説明します。脈流は交流→直流への変換の過程で発生し、「まだ整っていない、直流になりきる前の波形」とでもいえるものです。

交流は時間とともに+側、-側に変化する電気のことでした。ダイオードというパーツには整流作用があります。整流作用とは電気を一方通行にしか流さない作用で、順方向に交流を加えると、プラス側だけが出力側に現れます。このダイオードを使って、交流を脈流に変換することができます。 ダイオードを1個使って半波整流回路、4個使って(またはブリッジDiを1個使って)全波整流回路が組めます。ブリッジダイオードは全波整流用に組まれたユニットパーツともいえるのです。

ダイオードによる全波整流回路、半波整流回路と、整流後の脈流(全波整流)、同(半波整流)の時の波形を下の図に示します。波形の図のように、半波整流は交流の-成分を捨ててしまうため、効率が悪いです。


  

  

このように、交流電源は整流器を経て脈流となり、更に後段の平滑回路、安定化回路へと進みながら品質の良い直流電源となっていきます。


6月21日

今日はリプルについてです。
交流はダイオードを用いて整流して直流に変換できますが、ダイオードを通しただけでは交流は脈流に変換されるだけで奇麗な直流としては使えないということでした。ダイオードは+成分だけを通し-成分を通さないため、波形の半分だけが通ったり、-成分を反転して+成分に加算する作用はあるが、電気をためる作用は持っていないため、 入力波(ここではサイン波)が0の時にはダイオードの出力も0なんです。したがって、脈流、つまり0から上半分だったり-側を反転した形となってしまいます。
このままでは直流として使えないので、「山の凸凹を均しましょう」ということになります。電位の高い部分の電荷をコンデンサーに蓄えて、電圧が下がった時にコンデンサーの電荷を放電することで脈流の凸凹がなだらかになりそうです。しかし、多くの電荷を蓄えるコンデンサーは大きな容量が必要です。その辺りも写真にしてみました。


半波整流ダイオードのみのダイオード後の波形

0vより下側が無くなっています。-側の電力はカットされていて、効率は最大で50%と良くありません。


平滑コンデンサー(小)挿入

整流ダイオードの出口に小さなコンデンサー(10uF)を挿入してみました。無負荷状態です。赤い波形がコンデンサーによって平滑された直流です。下の黄色い波形はAC12vです。上下、1div=20vです。無負荷なのでどちらも高めに出ています。
平滑コンデンサーが小さくても、負荷が無ければこのようにきれいな直流となります。しかし、負荷をつなぐとそうはいきません。次からは実際に負荷をつないで電流を流してみます。


負荷にはこれを使いました

電圧が12Vなので、負荷にはこれを使いました。10Ω抵抗器です。12vだと1.2A流れますが、実際には少し高めの電圧となるため、更に高めの電流が流れます。トランスは2A、抵抗器は50Wなので大丈夫です。


平滑コンデンサー1,000uF

平滑用コンデンサー1,000uFを挿入してみました。半波整流+1,000uFです。上の赤色の波形が大きなリプルを捕えています。このように、供給する電力に対して平滑コンデンサーが不十分だと大きなリプルとなり、設計値である12vが出ていないことが分かります。


平滑コンデンサ4,700uF

 

平滑コンデンサを4,700uFに変更してみました。1,000uFに比べてリプルは大きく改善されています。しかし、12vはギリギリに見えます。このように、半波整流だと効率が悪く大きなリプルを含んだ電源となってしまいます。


ブリッジ整流による全波整流

そこで、ブリッジ整流による全波整流としてみました。これで、交流成分は全て平滑回路へ供給できることになります。条件は全波整流に変えた点以外は平滑コンデンサー4,700uF、負荷抵抗器は10オームで同じです。波形から分かるように、20vより少し上でリプルも抑えられています。半波整流ではカットされ捨てられていた―成分が反転され、+成分に加算されているのが分かります。 そのため、リプルの周期が半分になっています。


6月30日

日記調で書いているため、話が飛んでしまっています。

本日夕方、秋月電子で購入していたパーツが届きました(この中に含まれていないパーツは在庫を使います)。

材料はこれで総て揃ったと思うので、実際に作って性能を調べていこうと思います。左に写っているトランスは、先日O様よりのACアダプターの情報と少し違っていたため使わないと思います。


7月1日

早いもので、もう7月ですね。今年も後半へ突入です。

さて、昨日、秋月からパーツが届きました。今回作る電源のパーツの物ですが、その中で一番気になっているものがあります。

回路の組み方によって+、-の両方が得られる小型SW-レギュレターモジュールです。電圧は固定で、その分、種類があります(5V、12Vなど)。今回の目的は-12Vを得ることなので、12V用を購入しました。とても小さいですね。SWレギュレターだけあって、効率は94%です!(-は84%)。そのため、放熱処理が不要です。

実際に+電源用(左側:赤色LEDの方)、-電源用(右側:黄色LEDの方)に組んで作動させてみました。今回、入力電源はDC16Vです。回路図はデータシートそのままです。テスターに+、-の両電圧が計測されています。

この状態で30分ほど通電しましたが、電圧変動などはありませんでした。今回のテストは作動確認のためで、明日以降、適度な負荷をかけて試験を行います。今日は煙の発生はありませんでした。

このように、入力側、出力側に電解コンデンサを接続するだけで簡単に高効率で、しかも反転電圧まで得られる、便利なパーツでした。ノイズ対策などが必要かもしれませんが、その辺りは今後検討してみます。



7月10日

今回の電源の仕様についてO様とやり取りをしながら、汎用性の高さ故の仕様決定の難しさを感じました。私がユーロラックモジュールシンセについて知識が無いため、O様に的確な仕様の連絡ができず、ご迷惑をおかけしているところです。ユーロラック規格は各モジュールに供給される仕様についての取り決めであり、(当然ではありますが)電源の電力の入力側(供給側)は何でもいいわけですね。で、慣習的に何パターン化が存在しているようです。 電源本体もパワー的に、例えば「大/中/小」に分類され、その電源への電力の入力(供給)も数種類に分類されるとなると、仕様の確定が難しい。一番いいのは電源パワーの大/中/小を決めて、電源の電力供給側は「ACでもDCでもOK!PIN極性もセンター+、-、電圧も何でも来い!」的な懐の広い電源を作るのが一番いいのでしょうが、コストの面でそれは厳しくなります。

そこで、まずは「電源部は”+12V800mA/-12V400mA/+5V300mA”のいわゆるパワー的に小~中型で、供給される電源は直流15V1.5A以上(センタープラス)」を製作し、お納めしようと思います。想定されるBoxは小~中型タイプ(doepfo社でいえばA100MC Raw minicase~A100LC1)で、出力の16PINは6個ほどです。基板の大きさは 75 x 200 までを目指し、小さいBoxに入ることを優先します。

このようにオープンソースであり汎用性の高い電源なので、可能性として設計側が想定していない使われ方も十分に考えられます(例えば、直流入力を想定して整流部、平滑部を省いた設計のモノに交流が入力された場合等)。このような想定外の使われ方も普通に起こると考えた時、きっと故障の頻度が多くなるでしょうから、壊れているか正常に作動しているかを判断できる表示は必要です。 コストの面から、徹底的な入力の保護よりも、最低限の保護で後は正常/故障の判断ができるような構造にしようと思います。

具体的な保護回路は、入力された電力の逆極性を防ぐダイオードの挿入(逆極性が入力されると瞬時に過大電流が流れ、入力部のコンデンサー、レギュレター部などが大きく破損します)、3出力それぞれにヒューズを設置します。ヒューズは自動復帰型も考えたのですが作動までに時間がかかること、自動で復帰するのでユーザーが原因を見つけにくくなるため、溶断型とします。ヒューズが切れたらユーザーは"原因を排除して"新しいものと交換します。

ということで、次の仕様のものを製作します。

仕様


構 成

上の図のような構成で電源を製作していきます。O様のご希望で、AC-DCアダプター込みでお届けします。これは電源の規模でいうと小~中型となります。そのため、中規模のBox(例:doepfor社のA100LC1)などでも十分に実用となります。因みに、A100LC1は電源出力は+12V/-12V共に380mA/+5Vが100mAです。

左側のAC-DCアダプターは市販品を購入します。大きな四角が今回製作する電源部です。使用するのはAC-DCアダプターと決定したので、入力される電源は直流電源です。なので整流回路、平滑回路は不要となります。しかし、使用するAC-DCアダプターはSWタイプであることを考え、簡単な平滑回路を設けます。またDC15V入力で出力がDC12Vなので差分ΔVは3Vですが、DiがあるのでΔVは3Vより少なくなります。一般的なRegICのドロップ電圧は2Vとかそれ以上であり、 今回の使用状況では厳しいため、低ドロップRegICを使用します。四角の下方に色のついた〇が数個あります。これは各部位に電気が来ていることを示すインジケーターで、LEDです。出力が3つなので3色に分けました。例えば-12Vのヒューズが切れると、青色のLEDが2つとも消えています。



7月19日

梅雨も明けて、暑い日が続いています。こちら、中国地方は梅雨明けは早かったのですが、梅雨明け当初は夕立のような雨が多く、蒸し暑くも天気の悪い日が続きました。晴れ間が多くなったのは、ここ2~3日です。

さて、プリント基板の材料が届きました。

あれ?感光基板は???
まだないんですよ~!これが無いと始まらない。近々届くと思います。
普段は1個物を作るので、プリント基板まで作るのは久しぶりです。今回は部品を取り付け、半田付けまで完了したものを1枚、予備の基板だけのものを3枚の合計4枚を作ります。エッチング液は塩化第二鉄水溶液で、未使用のものは大丈夫なのですが、使用済みの廃液は銅が溶けているため、廃棄には適切な処理が必要です。エッチング液を購入すると廃液処理剤、廃液の方法がメーカーから添付されているので、それを使用してください。



7月22日

本日、感光基板が届きました♪これで材料が揃いました♪感光基板から作っていきます。最近は「クイックポジ感光基板」というのがありますね。露光時間が短いのでしょうか。短時間で作業できるのは良いことです。「プリント基板パターン印刷」→「感光基板露光」→「感光基板現像」→「基板エッチング」→「基板穴開け」でプリント基板が完成となります。作業の過程は順次アップします。



7月30日

昨夜、久しぶりに雨が降りました。毎日クソ暑いので、ほんの少し涼をもらった気分です。
プリント基板のパターンが完成しました。試しにA4白紙に印刷してみます。
こんな感じですね。

見ると、真黒なのが分かります。これは特にアース面を多くとったためです。銅箔はチップパワーパーツの放熱器になります。また、エッチング液を浪費させたくない事情もあります。これを上下に並べて1枚の感光基板から2枚作ります。専用のフィルムにプリントしてパターンフィルムの完成です。出力用の16PINヘッダーは6個配置できました。



8月2日

もう8月です!時間って早いですね。
今年の夏も暑いです。梅雨が大雨で開けて以降、まとまった雨が降っていません。夏痩せしそうですが、先日久しぶりに体重を測ると…1Kg増えてる!体重計壊れてる?

さて、プリント基板の作成中です。写真のように、エッチングまで終了しました。この段階ではまだパターンに感光層が残っているので、何色とも言いにくいくすんだ色をしていますが、感光層を取ると、光沢の銅が現れます。その後、各パターンの絶縁試験、錆び止めのためフラックスを塗り、部品のピン穴をドリルで開け、中央で2枚に切断してプリント基板は2枚が完成です。

本来、ここには4枚の基板が完成するはずでした。なぜか露光後の現像でパターンが出てこなかった。薄く出て消えてしまいました。なぜだろう?残りの2枚は条件を再検討しながら再度やってみます。取り合えず2枚、このまま進めます。

8月3日

今日は午前中農作業をして、少し休んでからこの電源基板の続きをしました。外での作業は暑くて痩せそうです(しかし、痩せない!)。
昨日、プリント基板のエッチングまでを行いました。今日は露光層を除去して乾燥させたのち、フラックスを塗布するまでの作業です。露光層は金属たわしなどで落とせるのですが、そのままで再度感光させて現像液に浸けて除去すると奇麗に除去できます。銅箔がきれいに露出されたら、全体を乾かしてなるべく早くにフラックスをパターン面に塗布します。 フラックスを塗らなかったり長時間そのままで放っておくとパターン面の銅箔が汚れたり錆びたりして美しくありません。指紋状の汚れ、錆が出たりして、みっともないです。
フラックス塗布まで完了した基盤の写真です。

8月9日

今日は全国的に天気が悪かったようです。こちら、岡山ではごく小さい台風が通過していきました。岡山辺りでは温帯低気圧になったのかもしれません。雨は午前中ずっと降っていましたが、風は昼頃に少し強めに吹いただけでした。

さて、電源基板がやっと完成しました。部品を実装中にパターンの不具合を発見し、修正しながら実装していて時間がかかってしまいました。それで急ぎつつ作業していると、今度は通電テストでコンデンサーがパンク!原因究明など、ごそごそやっていました。単に実装時の極性間違いでした。ガスが出てパンと破裂する音、久しぶりでした。 ±両極性電源でコンデンサーの極性を間違っていました。トランスから両極電源であれば、回路図の下半分は負圧と分かりやすいのですが、今回は元電源は+極性のみで反転電源で負圧を作っているため、こんがらがってしまいました。修正して直ったのが写真です。

修正した基盤が2枚あるため、その2枚は部品を実装しました。




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